【見事な構成】Mariah Careyの12thアルバム『Memoirs of An Imperfect Angel』はアルバム1枚で1つの物語に!

ヒップホップ数珠繋ぎは編集長で元DJの銀河がおすすめの音楽を気まぐれで紹介するコーナーです。「温故知新」をキーワードにサンプリングの元ネタ、ヒップホップの歴史や文化を発信していきます。
今回はMariah Careyのアルバム『Memoirs of An Imperfect Angel』です。関連楽曲なんかも合わせて紹介しているので、お気に入りの楽曲、元ネタやサンプリングの経緯、ヒップホップの歴史や文化に少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです。
- Memoirs Of An Imperfect Angel / Mariah Carey
- アルバム詳細
- レビューと解説
- トラックリスト
- 1. Betcha Gon’ Know (The Prologue)
- 2. Obsessed
- 3. H.A.T.E.U.
- 4. Candy Bling
- 5. Ribbon
- 6. Inseparable
- 7. Standing O
- 8. It’s A Wrap
- 9. Up Out My Face
- 10. Up Out My Face (The reprise)
- 11. More Than Just Friends
- 12. The Impossible
- 13. The Impossible (The reprise)
- 14. Angel (The Prelude)
- 15. Angels Cry
- 16. Languishing (The Interlude)
- 17. I Want To Know What Love Is
Memoirs Of An Imperfect Angel / Mariah Carey

アルバム詳細
タイトル | Memoirs of An Imperfect Angel |
アーティスト | Mariah Carey |
レーベル | Island Def Jam |
リリース | 2009 |
レビューと解説
Mariah Carey(マライア・キャリー)の12枚目のスタジオアルバム。前作『 E = MC2 』から1年ちょっとという短いスパンでリリースされた本作は、1stシングル『Obsessed』のヒット(シングルチャート7位)や2ndシングル『I Want To Know What Love Is』がブラジルのラジオエアプレイチャートで、27週連続1位になる前代未聞の新記録を達成(歴代1位)するも、アルバムの全米チャートでは3位にとどまる結果となりました。
ただし、収録曲それぞれが1つのストーリー性を持っており、アルバム1枚を通して全体で1つの壮大な物語となっている構成やコンセプトが業界から絶賛されました。
トラックリスト
1. Betcha Gon’ Know (The Prologue)
ピコピコとなる電子音が物寂しげな雰囲気を醸し出すスローな曲からスタート。「Welcome to a day of my life(私の1日へようこそ)」なるリリックから静かに始まります。
ちなみにこの曲は5年後にR. Kelly(R.ケリー)とのデュエットでリミックスされ、14thアルバム『Me, I Am Mariah… The Elusive Chanteuse』に収録されます。
2. Obsessed
アルバムからの1stシングル。元カレのEminem(エミネム)に『Bagpipes from Baghdad』で夫のNick Cannon(ニック・キャノン)とまとめてディスられたため、それに対してのアンサーソングだと言われています。
ミュージックビデオでも、マライア本人が男装してパーカーのフードを被ったエミネムっぽい人に扮していますね。
37秒から名指しですね
また、リミックスではGucci Mane(グッチ・メイン)を客演に迎えています。
3. H.A.T.E.U.
3rdシングル。ちょっと読みづらいけど「Hate You」の意味のタイトルで、「今すぐ嫌いになりたいの」と歌う失恋ソングですね。
マライア自身が大ファンで、ホイッスルボイスのきっかけとなたMinnie Riperton(ミニー・リパートン)並みの超高音ボイスが印象的なバラードです。
4. Candy Bling
エレピの静かなメロディの中、スナップが印象的に鳴り響く透明感のあるトラック上で、マライアの囁くようなボーカルワークがかっちりはまった気持ちの良い楽曲。ちなみに全然曲調が違うのでわかりづらいですが、実はG-Rap好きにはお馴染みのAhmad(アーマッド)の『Back in The Day』をサンプリングし、アーマッド本人も制作に参加しています。
こんなところが繋がってるなんて意外ですがフックに「Back in the day……」とあるのはそれ故ですかね。
5. Ribbon
ゆったりとしたスローバラードにスクリュー加工した男性ボイスが絡むけど嫌味なく聴こえますね。
6. Inseparable
ピアノの静かなメロディにハードなバスドラムとクラップが絡むバラード。ただこれマライアのボーカルをよく聴くとなんか聞き覚えがある感じ……元ネタはCyndi Lauper(シンディ・ローパー)の大ヒット曲『Time After Time』でした。
意識して聞かなきゃわからないけどねw
7. Standing O
「オッオッオッオーオッオー」とオートチューンを使ったメロディが耳に残るミッドソング。ちなみにこの曲、発表当時に韓国の4人組アイドルグループ2NE1(トゥエニィワン)の『In The Club』という曲に似ていて、「マライアが盗作した」みたいな論争が一部起こったらしいですが、真意のほどはいかに。
8. It’s A Wrap
Barry White(バリー・ホワイト)が手がけたガールズ・トリオLove Unlimited(ラブ・アンリミテッド)の『I Belong to You』をサンプリング。ネタがネタなだけに80年代ソウルを思い起こさせる雰囲気です。
また、この曲は5年後にまさかのMary J. Blige(メアリー・J・ブライジ)とのデュエットでリミックスされ、14thアルバム『Me, I Am Mariah… The Elusive Chanteuse』に収録されます。
9. Up Out My Face
軽快なピアノとホーンが絡むキャッチーな1曲。実はリミックスアルバムに収録予定だったNicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)を迎えたリミックスがあるのですが、アルバムが発売中止となったためダウンロード配信のみでリリースされています。
かなり良い味を出しているのですが、アメリカの人気番組『アメリカン・アイドル』への審査員としての出演がきっかけでビーフに突入……いまはどうなってしまったのでしょうか。
もうお手上げw
10. Up Out My Face (The reprise)
続くは前曲の吹奏楽バージョン。夫のニック・キャノン主演の映画『Drumline』の影響を感じさせますね。
11. More Than Just Friends
Puff Daddy(パフ・ダディ)プロデュース曲。フックのメロディにThe Notorious B.I.G.(ノトーリアス・B.I.G.)のクラシック曲『One More Chance(Stay with Me Remix)』を引用していますね。
12. The Impossible
Jodeci(ジョデシィ)の『Forever My Lady』をサンプリングネタに使ったバラード。イントロから終始絡んでくるトークボックスも絶妙です。
13. The Impossible (The reprise)
ビートがスナップのみとなったことで、ボーカルや他の楽器がより際立つようになりました。
14. Angel (The Prelude)
次曲に続くイントロ。ピアノメロディがゆったり流れる中でマライアのホイッスルボイスが楽器のように合わさって流れています。
15. Angels Cry
前曲の流れからアカペラでスタート。ピアノの綺麗なメロディが神々しいキラキラ系の壮美な名バラード。
伸びやかなボーカルが気持ち良いです。この曲もリミックス・アルバムに収録予定だったNe-Yo(ニーヨ)を迎えたバージョンがあります。
9thアルバム『Carmbracelet』収録のヒット曲『Through The Rain』を思い起こさせる雨のビデオです。
16. Languishing (The Interlude)
ピアノ弾き語りっぽいスローでラストへと繋げていきます。この後半の流れは本当に素晴らしい。
特にここからラスト曲への入り方なんてイントロのピアノが聞こえた瞬間鳥肌ものです。シングルごとのダウンロードやストリーミング再生が主になった現代と違って、当時は「アルバムで発売」がメインだからこういう構成があったんですよね。
こういうのが面白いから可能な限りアルバムで聞いてもらえると制作者の意図がもっと感じられるかと思い思います。
17. I Want To Know What Love Is
アルバムのラストは2ndシングルとなったこの曲。ロックバンドForeigner(フォーリナー)の全米全英No. 1ヒット曲である同名曲『I Want To Know What Love Is』のカバーです。
本国アメリカではシングルチャート60位という微妙な結果でしたが、ブラジルでなんと27週連続1位(!)という前代未聞の記録を打ち立てました。
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